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教授挨拶

 精神科診療を受ける患者さんの数は長らく増加の一途をたどっています。これは、疾患に罹患する人が増えているだけでは無く、多くの人たちの努力によって気分障害、不安障害、睡眠障害、神経発達症などの疾患概念が普及し、それに伴って精神医学への印象が変化した結果、潜在的に受診すべきであった患者さんが精神科を受診するようになったことも理由として考えられます。また現在では、狭い診療科を超える様な状況、すなわち身体疾患と精神疾患を同時に診療する場面が増えています。いわゆる一般的な身体疾患から緩和医療、妊娠出産に関連する場面などでの精神科医療の参画が望まれていますし、小児科との連携や認知症治療への参画など多岐にわたって要望は増加しています。社会的な役割も労働衛生、教育場面、司法などと広がり続けており、精神医学は多くの社会的場面に、専門的な立場からの意見を求められる重要な分野の一つと言えるのかもしれません。

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尾関 祐二

 精神医学は他の診療科よりもいわゆる自然科学的な手法が到達できていない部分が多く、人文科学的な働きかけも重視されています。精神医学が主に対象とする臓器である中枢神経系は、特に精神医学が対象とする分野においてその生理的な機能の解明が非常に困難であることとも精神医学に自然科学的な手法が適応しにくいことと関係している様に思われます。

 とはいえ、日々問題を抱えた患者さんは病院にやってこられますので、できうる限り有効な治療・対処を日々提供しなくてはなりません。当診療科でも、当然ではありますが精神薬理学などを中心とした科学的な側面を重視しつつも、心理学的な側面や「職人的」な経験にも軸足をおいて、可能な限り標準的で効果的な、少しでも患者・家族さん達の辛さを和らげる方法を考え診療に当たっています。研究でも、こうした現状に沿って、日々の診療の質を上げるための課題から病態に迫るようなものまで、精神医学の内容をより前に進めるべく、日々取り組んでいます。

 精神医学も時と共に成長を続け、その重要性は増し続けています。滋賀医科大学精神医学講座ではこうした現代の精神科医療に求められる役割をひとつひとつこなしてゆくことを常に考え活動しています。

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教室の歴史

 昭和53年4月に滋賀医科大学精神医学講座が開設され、初代教授として、髙橋三郎先生(現滋賀医科大学名誉教授)が京都府立医科大学より着任されました。髙橋三郎先生は精神疾患の生物学的な特徴に注目をされ精神内分泌学、時間生物学的な側面や精神科薬物療法の発展に貢献されました。また、国際的に標準的診断基準の一つであり、現在では日本でも日常的に使用されているようになったアメリカ精神医学会作成の診断基準であるDSM(diagnostic and statistical manual of mental disorders)の翻訳を長年手がけられ、日本で広く使用されるようになる契機となったDSM-IIIから最新のDSM-5までの翻訳に携わっておられます。平成8年からは加藤進昌先生が2代目の教授に就任されました。在任中は神経内分泌学を専門とされ睡眠、てんかんなどを特に専門として研究・診療・教育に当たってこられ、現在は大人の発達障害の分野で活躍されておられます。滋賀医科大学脳神経センターの生みの親でもあります。加藤進昌先生が東京大学に教授として転出された後、平成13年より大川匡子先生が国立精神・神経医療研究センターより3代目教授に就任されました。大川先生は特に睡眠分野を専門とされ、滋賀医科大学における睡眠センターの立ち上げに尽力されました。平成19年からは山田尚登先生が4代目教授に就任されました。これまでの滋賀医科大学精神医学講座の伝統を受け継ぎ睡眠医療の発展などを推し進めると共に、滋賀医科大学の副学長も務められました。平成31年3月からは尾関祐二が5代目としまして重責を引き継ぎました。これまでの活発な研究、臨床、教育の活動を継続し、教室の伝統を引き継ぎ発展させつつ、精神医学を取り巻く現在の環境に適合してゆくことを命題に、日々取り組みを進めています。

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